大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 昭和24年(つ)1240号 判決

被告人

寺尾淸

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役二年に処する。

但し本裁判が確定した日から参年間右刑の執行を猶予する。

押收している鋏一本(檢第一号)はこれを沒收する。

原審に於ける訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人松田光の控訴趣意について

しかし原判決が認定した事実は原判示の樣ないきさつから再度被告人が磯貝新藏と殴り合う内原判示の場所で同人が被告人を組敷きその首を締め付けた爲被告人が窮余その場に有合せの鋏(檢第一号)を取上げ矢庭に同人の原判示部位を突刺し依つて原判示の樣な刺創を負わせその刺創に基く化膿性脳背隨軟膜炎の爲死亡するに至らせたものであるというのであつて、被告人及び弁護人の所論のような正当防衞の主張に対し被告人が磯貝新藏から組敷れて首を締められたため判示犯行に出でた事は証拠によつて認められるところであるけれども、被告人が首を締め付けられたのは右磯貝と互に鬪爭行爲をなす間に偶々被告人が陷つた不利の体勢に過ぎないのであつてこれを以つて急迫不正の侵害ということは出來ず從つてこれに対する被告人の判示所爲は正当防衞行爲といふことは出來ない旨判断しているのであるが、記録を調整するも原判決の事実の認定並びに被告人及び弁護人の所論の主張に対する判断に毫も誤謬があることを認める事が出來ないので正当防衞を主張する論旨は理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例